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鉄骨造・ALC版塗装仕上げの雨漏り事例【雨漏り110番川崎店】

2019.03.26 建築構造・建築施工,雨漏り調査の方法,雨漏り修理,雨漏り修理の方法,雨漏り事例,雨漏り診断・雨漏り調査,コラム

本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番川崎店の内田が担当します。
どうぞよろしくお願いいたします。

弊社に頂く雨漏りのお問い合わせ・ご相談の中で、木造と並んで多いのが鉄骨造の建物です。
一口に鉄骨造といっても、重量鉄骨と軽量鉄骨があり、仕上げもALC版塗装仕上げ、ALC版タイル張り仕上げ、アルミやガラスのカーテンウォールなど、様々な構造・仕上げがあります。
今回のコラムでは、普及率の高いALC版塗装仕上げの雨漏りの事例について書かせていただきます。

管理会社様から『マンションの1室で大雨や強風時に雨漏りする』とご相談がありました。
建物の概略と雨漏りの状況をメールでいただきました。
メールの内容は下記の通りとなります。

用途・・・・・集合住宅
構造・・・・・鉄骨造 3階建て
築年数・・・・34年
屋根・・・・・陸屋根/ウレタン防水
外壁・・・・・ALC吹付タイル※一部タイル張り
漏水箇所・・・3階 南面の窓サッシ上部から
改修履歴・・・12年ほど前からシーリング補修、塗装工事、防水工事をしているが改善しない

後日現地調査にお伺いし、管理会社の担当者様から現在の雨漏り状況とこれまでの経緯をお聞きしました。
雨漏りが発生している部屋は空室になっており、南面のベランダ側・掃き出し窓のサッシ上部が雨水浸出位置(漏水箇所)でした。

ベランダに出て外壁を目視確認すると、過去に補修工事を繰り返した形跡がみられました。
しかし、サッシまわりのシーリングは破断しており、ALC版を継いである部分(版間目地ではなく継ぎ足し部分)に関しても、過去に補修した部分が既に開いている状態でした。
続いて、雨漏りしている部屋の上階にあたる屋上を確認しましたが、既存のウレタン防水層に特に目立った不具合は見当たらず、笠木からの吹込みの可能性も低そうでした。

以上のことをふまえ、当該雨漏りにおける雨水浸入位置(被疑箇所)は、外壁の不具合部分の可能性が高いことをご担当者に伝えたところ、過去に何度も補修を繰り返したにもかかわらず、全く改善しない経緯があることから、今回は散水による雨漏り調査を実施して雨漏りの原因箇所を特定して欲しいとの強いご要望でした。
後日、日程調整のうえ散水調査による雨漏り診断を実施いたしました。

雨水浸出位置であるサッシ上部のALC版を継いである部分に散水すると、5分程度で水が浸出してきて雨漏りの雨水浸出状況を再現しました。

散水開始から浸出するまでの時間が早いので、さらに細かく調査を続けていきます。
雨水浸入位置を絞り込むのが目的です。
室内への浸出(漏水)が止まるのを確認し、ALC版を継いだ部分よりも散水する位置を下げて散水します。

今度は散水開始から3分程度で浸出を確認しました。

同じく室内の浸出が止まるのを確認後、さらに散水位置を下げてサッシまわりのシーリングに散水します。

わずか1分程度で浸出を確認しました。
浸出までの時間が早いのは、雨水浸出位置と近いことも考えられます。
ここまでの調査で、サッシまわりシーリングが雨水浸入位置であることは特定できました。
このあと、複数浸入雨漏りの可能性を考えて、さらに散水調査を継続します。
既に特定したサッシまわりのシーリング部分に試験水がかからないよう養生を施したうえで、最初に散水したALC版を継いだ部分にあらためて散水します。

ここでも2分程度の散水で浸出を確認しました。
これで、サッシまわりシーリング部分と加えて、ALC版を継いだ部分も雨水浸入位置であることが特定できます。

散水前に被疑箇所と見立てた部分から雨水浸出が確認される、まるで仮説の答え合わせのような雨漏り調査になりましたが、この他に被疑箇所が見当たらないことから、本案件は複数浸入雨漏りであり、雨水浸入位置はサッシまわりのシーリング部分とALC版を継いだ部分の2箇所であるという結論に達しました。

このサッシまわりのシーリング部分とALC版を継いだ部分については、どちらも過去に補修工事が実施されていました。
にもかかわらず雨漏りが改善していないということは、結果的に補修工事の仕様が間違っていたと言わざるを得ません。
ALC版塗装仕上げ面の防水性能は、仕上げ塗料(外壁塗膜)とシーリング材に依存しています。
よってシーリング材の破断・界面剝離やALC外壁のクラックは、雨漏りに直結する可能性が極めて高いといえますので適切な処置が必要です。
本案件では、雨水浸出位置が3階建ての3階部分角部屋である事から、雨水の浸入経路になり得る被疑箇所の対象範囲が比較的少なく、なおかつ補修が必要な部分がベランダの上部であることから、足場を組まずに部分的な補修による対策工事を提案いたしました。

実際の補修工事の写真を基に今回の雨漏り修理の仕様をご説明します。

まずはシーリング処理です。
版間目地、開口枠(サッシまわり)ともに、既存シーリング材を撤去したうえ、ポリウレタン系ノンブリードタイプのシーリング材にて打替えます。

ALC版の継ぎ目(継いだ部分)の補修です。
亀裂誘発目地として新たに目地を新設する方法とどちらが良いか迷ったのですが、今回については大きなムーブメントが無いことを想定し、埋戻す仕様を選択しました。
長年の雨水浸入によりグズグズになったALC版内部の不良部分を撤去し、シーリング材を充填してエポキシ系樹脂モルタルで戻します。

仕上げの塗装処理です。
ALC版の塗装仕様の選定は非常に難しい部分があります。
雨漏りのリスクを考えると高い防水性を求められる一方、ALC版のような蓄熱性の高い素材に透湿性の低い弾性型の塗料は不向きと言う一面があるからです。
今回は実際に雨漏りが発生している現状を考慮し、雨漏りのリスクを低減するために、下記の仕様を選択しました。

1.シーラー塗装
2.弾性ホールド材(多孔質ローラー)
3.アクリルシリコン樹脂塗料
4.アクリルシリコン樹脂塗料
上記4工程で仕上げます。

補修後、止水確認のための散水検査を実施し、雨漏りが止まっていることを確認したうえで、全工程を完了しました。

ALC版塗装仕上げの雨漏りは、不具合部分が目視で確認できるケースが多いため、一見簡単そうに思われますが、補修方法や仕様を間違えてしまうと、すぐに再発する可能性があります。
ALC版塗装仕上げの建物の改修工事や大規模修繕工事を実施する際は、先々の雨漏りを予防するという観点からみた修繕仕様・計画をたてる事が重要だと考えています。

雨漏りでお困りの皆様、雨漏りの補修工事で失敗し、後悔されないためにも、数多くの雨漏り事例を共有し経験豊富な私たち雨漏り110番グループにご相談ください。

2019年3月26日
雨漏り110番川崎店
内田博昭

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