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鉄骨造6階建ての建物で発生した雨漏り事例【雨漏り110番田端店】

2019.04.01 建物のメンテナンス,建築構造・建築施工,雨漏り事例,雨漏り診断・雨漏り調査,雨漏りに取り組む,コラム

本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番田端店の志村が担当いたします。
よろしくお願いいたします。

今回は、鉄骨造6階建ての建物にて発生した雨漏り事例をご紹介します。
雨水は本当に思いがけないところから浸入する、という事例の一つです。
他の業者さんで何度も調査や修理をしても、結果的に雨漏りの原因特定に至ることができず、オーナー様がワラにもすがる思いで弊社へ駈け込んで来られたケースです。

弊社にご相談いただくまでの間、オーナー様をはじめ当時の施工業者の方々も大変なご苦労とお悩みの日々であったかと思います。

それではまず建物の概要です。

<建物種別>
工場、賃貸テナント及び賃貸住宅(1階工場、2階はテナント、3階以上は住居)

<構造>
鉄骨造6階建て

<外装仕上げ>
外壁=ALC(軽量気泡コンクリート)造、タイル貼り仕上げ、一部塗装仕上げ
屋上=ウレタン防水
バルコニー=ウレタン防水
外階段踊場=ウレタン防水

<築年数>
1995年竣工

同じような建物にお住いの方やオーナー様は大勢いらっしゃることと思います。

続いて、雨漏りの状況をお伝えします。

<雨漏り時期>
2013年夏(築18年目)

<雨漏り箇所>
◆2階テナント様のトイレ天井
※直上は3階住居のミニキッチンとなっています。

<当時の状況>
◆築18年目の2013年夏、豪雨を伴う台風の日に初めて雨漏りを確認。

◆この建物を建築した業者に相談したところ、ブランコ(ロープ作業)と梯子で、外部のひび割れと窓周り等の調査を行い、ALC外壁に割れが確認されたことからシーリング補修を実施。

この時点では雨漏りは止まったと考えられていました。

<2回目の雨漏り>
◆2016年、雨漏りが再発。

◆今回も台風による大雨であった。

◆再び建築業者に相談し、2階トイレ天井に点検口の設置と外部のシーリング補修を実施。

しかし雨漏りの原因を特定するまでには至らず、しばらく様子を見ることとなりました。


このとき取り付けられた2階トイレ天井の点検口。

<3回目の雨漏り>
◆それ以降も台風や集中豪雨の際に同じ場所から度々雨漏りが発生。

また建築業者に連絡、数日かけて調査したものの、やはり原因の特定には至らず、今度は外階段まわりのシーリングを打ち替えるなどして様子を見ることになりました。

<建築業者からのギブアップ>
◆2017年春の集中豪雨にて、これまでと同じ場所に雨漏りが再発。

建築業者に連絡したところ、手を打てる箇所は全てやり尽くした、とのこと。
それは、これ以上の対応は無理だという業者からのメッセージでした。

<雨漏り110番田端店へのご相談>
建築業者のこれまでの対応への不満と不信感から、インターネットなどを使い、別の業者を探される中で、雨漏り専門業者である私ども雨漏り110番田端店に調査のご依頼をいただくことになりました。

<弊社による調査開始>
まずは現地調査とヒアリングから始めます。
雨漏り原因の特定には知識と経験が必要になりますので、現場を生で見ること、状況をしっかり聞かせていただくことが非常に重要です。

そして、そこで得た情報からどれだけのことを想像できるか?が、鍵になります。
建物のメカニズムから起こり得る可能性をはじめ、通常は起こり得ないような状況も想定します。
思いがけないところにどれだけ思いを巡らせることができるか、ここが他の業者との違いであり、真似のできない部分です。

断言しますが、この感覚を持っていない業者では雨漏りに正面から向き合うことができません。
場当たり的な対応はできても、根本解決まではたどり着けないので、結果として雨漏りを解決できず、一度は止まった雨漏りも早々に再発してしまいます。

<現地の状況>
2階の直上が3階ミニキッチンであることから、2階トイレ天井点検口より、まず給排水設備を点検し、内部配管に漏水などの問題がないかを確認しましたが、問題はありませんでした。

次に、一般的には外壁ALCの不具合が考えられますので、過去に建築業者が施工したシーリング材の劣化状態を確認したところ、それほどの傷みは見受けられませんでした。

ちょうど現場調査をしていた頃に台風が発生した日があり、雨水の浸入を実際に確認することができました。
また、雨が止んだ後は比較的短時間で雨水の浸入が止まることが分かりました。

台風直後。
かなりの量の雨水が浸入しています。

写真の天井裏には前出の建築業者にて雨水受けトレーが設置されておりましたが、雨量がひどい時にはトレーから溢れた水が天井から落ちてくる状況であったそうです。
ただし、いわゆる普通の雨では雨漏りはしない、とのことでした。

<仮説を立てる>
ALC造という構造から判断すると、10センチもの厚みがある軽量気泡コンクリートにこれだけの量の雨水を通過させるのは容易なことではありません。もし外壁からの雨漏りであれば、その原因となる箇所が見つかるはずです。

しかし、外壁と外壁ALC目地のシーリングには特に問題が見つかりませんでした。
そこで、それ以外の雨水浸入経路について、いくつかの仮説を立てました。

<仮説1>
屋上笠木のサイズ不良が原因で、雨水がALC外壁の繋ぎ目を通り、2階トイレ天井に浸出する。

<調査結果>
屋上笠木廻りの状態を確認すると、笠木の掛かりが浅く、サイズが小さく感じられましたが、この建物の雨水の浸出は2階天井であり、6~3階をとばして到達するとは考えられません。
ということは、ここが原因箇所である可能性はかなり低いと言えます。

<仮説2>
雨水が浸出した部分の上部にある外階段の踊場と外壁の取合い(つなぎ目)、ササラ鋼(階段を支える梁)と外壁の取合いのシーリングが破断したことにより、雨水が2階トイレ天井に浸出する。

<調査結果>
シーリングにそれほど劣化は見られず、雨掛かりも比較的少ない場所だったため、こちらも雨漏りの原因箇所ではなさそうです。

<仮説3>
通常の雨では濡れない場所に豪雨の時にだけ雨が当たり、外壁の開口部や鉄骨の躯体引込部(外階段の鉄骨と外壁を挟んで内部鉄骨とが繋がっている部分)を通って2階トイレ天井に浸出する。

<調査結果>
外部足場より外階段の躯体引込部を確認したところ、原因箇所と疑わしき点がいくつか見えてきました!

外階段の躯体引込部は各階とも踊場の裏側に存在し、下地鋼の※H鋼を覆うように踊場外側に※FB鋼というものが取り付けてあります。(※下の写真参照)
これにより、仮に横からの強い吹き込みがあっても、踊場裏側に雨水が回ることは無いようになっています。

しかし、雨量の多い日に2~3階に上がる鉄骨階段踊場裏のH鋼の上を触ってみると、雨水が回っていることが確認できました。
この本来入るはずのないH鋼上に入った雨水が、躯体引込部の隙間から内部に入り込み、2階トイレ天井に伝っていたのです!

<雨漏りのメカニズム>
つまり、今回の雨漏りのメカニズムは次のように説明できます。

鉄骨階段外側の角柱鋼と下地H鋼、それを覆うFB鋼の取付が各階にて微妙に違っており、各階とも柱と踊場FB鋼の取付位置に多少のズレが生じていました。

また、2~3階、3~4階の踊場裏のH鋼とFB鋼には隙間が存在し、さらに本来は水平であるべきH鋼が躯体引込部に向かって下がっていることが分かりました。

台風などの豪雨で雨量がかなり多い場合、外階段外側の角柱鋼で受ける雨水が増し、踊場下地鋼の隙間からH鋼に伝わり、そのまま躯体引込部を伝って内部に入り、2階トイレの天井裏に浸出した、ということになります。

通常、鉄骨階段は定期的に塗装されますが、こちらのH鋼上は指一本が入るか入らないかの隙間しかなく、塗装し難いため、新築時の錆止め塗装のままの状態で、保護の為の塗装がされておりませんでした。

そのため腐食の進行や錆の発生もあり、雨水がH鋼の上を伝わり易くなるような道ができてしまったと考えられます。

<本件の対応>
抜本的な解決方法として、H鋼上を雨水が走らないように角柱鋼とFB鋼、H鋼の取合いをバックアップ材とシーリング材で塞ぎました。

また、躯体引込部を確認したところ内部にかなりの空洞がありましたので、引込部手前のH鋼柱上にバックアップ材で堰止めした上でシーリング材を充填し、確実に雨水を食い止める壁を作りました。

さらに、念には念を入れ、他の階の躯体引込部にも同様の施工をいたしました。

これ以降、豪雨や台風であっても雨水の浸入は起こっておらず、雨漏りも確認されていないことから、根本解決ができたと考えております。

<最後に>
雨漏りの原因を特定するというのは、我々プロにとっても容易なものではありません。
数々の事例に正面から向き合い続けてきたことで得た経験と、想像する力、解決する力が必要です。

馴染みの業者や、建築会社とのお付き合いは暮らしの安心のため、とても大事なことです。
しかし、雨漏りの知識は独特です。
解決能力を持たない業者とのお付き合いは、お互いに疲弊します。

雨漏り110番では、グループ全体をレベルアップするために、知識の共有をはじめとした様々な取り組みを実施しています。

雨漏りにお悩みの皆様、是非とも専門業者である雨漏り110番グループにご相談ください。

最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

2019年4月1日
雨漏り110番田端店
志村徳彦

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