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「あれっ!もしかして雨漏り⁉」と思ってからのお話・その3【雨漏り110番小平店】
本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番小平店の米澤が担当します。
よろしくお願いいたします。
平成が終わりまして今月1日より令和(れいわ)に改元し、新しい時代が始まりました。
新元号に込められましたメッセージの通り「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育ち、明日への希望を咲かせる国であるよう」平和な実りある世が続くことを願います。
前回、私がこのコラムを担当したのが4月の始め、ちょうど「令和」が発表された頃でした。「あれっ!もしかして雨漏り⁉」と思ってからのお話はちょうど時代をまたいでの続きものということになりました。そしてこのお話は今回で最終話、実際にどの様な工事を行なったのかという話に入ります。
20年以上雨漏りに悩まされ、いろいろな対策工事を行ないながらも雨漏りが止まらずにいたお客様が、雨漏り110番小平店に連絡し、散水調査を行ない、原因箇所の特定に至りました。そしていよいよ雨漏り修理となります。では一体どのような工事が行なわれなのかをお話し致します。
【モルタル外壁の構造】
修理の説明を行なう前にまずモルタル壁の構造を理解していないといけません。一般的な戸建て木造住宅モルタル外壁のお宅で雨漏りがあった場合、基本的には本物件と同様の修理が行なわれると思いますので、このコラムをお読みいただいている雨漏りでお困りの方や雨漏り修理に苦労している同業の方々の一助になればと思います。
以下の図1をご覧下さい。
一般的なモルタル外壁はこの様な構造で成り立っています。雨水の浸入を防ぐために、先ずは仕上げ材の防水性能があります。これを1次防水と呼びます。通常ですと仕上げ材表面の防水性によって雨水は壁内に浸入することはありません。ところが経年の劣化でその防水性が失われたり、地震等の外部からのカによってヒビ割れが出来てしまったりしますと、壁の内側、つまりモルタルの裏側に水が回ってしまうことになります。
しかし、これで直ぐに雨漏りが起きてしまう訳ではありませんのでご安心下さい。モルタルの裏側に回った水はアスファルトフェルトの上を流れ、霧除けや水切りの上部等から排出されます。これが2次防水であり、雨仕舞の仕組みです。
つまりモルタル外壁で雨漏りが発生するということは雨仕舞に問題があり、1次防水と2次防水の双方に何らかの不具合を抱えていることになるのです。
ですから雨漏りをちゃんとしっかり直したいと思ったならば1次防水と2次防水の双方を直し、正常な雨仕舞に戻す以外には方法は無いのです。シーリング等の1次防水に頼った補修はあくまでも一時的な簡易なものと考えなくてはなりません。
それでは2次防水を直す雨漏り修理についてお話し致します。
【モルタル壁の雨漏り修理】
壁の内部を修理する訳ですから、まずは既存の外壁を斫らなければなりません。斫る(はつる)とは一般的には馴染みのない言葉だと思われますが、主に建設現場で使われ、壁や土間を鑿などで削ったり壊したりすることをいいます。
外壁の斫り作業で特に注意すべき点は2次防水であるアスファルトフェルトを傷付けではいけないということになります。雨水の浸入があった箇所ではアスファルトフェルトが劣化しボロボロになっていることが多いので、健全な部分が出てくるまで斫りの範囲を広げることになります。
外壁を斫り、内部を確認すると、想定していた範囲に何らかの不具合を見付けることになるのですが、想定外の状態に遭遇することもしばしばあります。
雨漏りは具像として目に見えなければなかなか気付けません。しかし実際には具像としては表われてはいないものの微量に雨水が浸入し、壁内で柱や梁などの木部を腐らせていたり、シロアリが発生していたりすることがあるのです。
こうなってしまうとかなり大規模な修理が必要となり、金銭的な負担も大きくなってしまいます。
「外壁を斫ってみたら酷かった」ということは決して少なくないのです。
話しを戻しましょう。外壁を斫り、壁内を確認すると何らかの不具合があります。この度の事例ではまず2次防水の端末処理が出来ていませんでした。というよりもこの家が建てられた当時はそこまで考えられていなかったのでしょう。
昨今の建物においては、先に説明した図1の通り、モルタル壁は構造用合板の上にアスファルトフェルトを貼り2次防水を形成します。そしてサッシや開口部の取り合い部分はブチルテープとシーリング材で止め、内部へ水が浸入しないようになっています。
ところがこのお宅では構造用合板ではなく杉板が間隔を空けて並べられていました。これは木摺り(きずり)と呼ばれるラス下地板の工法でこのこと自体は特に問題ないのですが、下地板に間隔が空いているのでアスファルトフェルトを止める際に打ち損じたり、フェルト自体が切れてしまったりと2次防水の不具合が発生し易いという欠点があります。
また、サッシ等との取り合い部分に面合わせ材を施工していないと防水テープが貼れないのですが、このお宅では面合わせ材がなく、サッシや開口部の取り合いはアスファルトフェルトが切り放しになっていました。
これでは壁内に雨水が浸入した際にアスファルトフェルトの裏に水がまわり建物内部へ到達してしまうのも当然です。当時はそこまでシビアに2次防水について考えられてはいなかったのでしょうか。その為、雨水の浸入により木部がボロボロになっている箇所がありました。
古くボロボロになったラス板を取り除き、間柱に垂木を添えて補強して、合板を張り、アスファルトフェルトを貼り、サッシの取合いはしっかりとブチルテープとシーリング材で処理をして2次防水を完成させます。
その後はラス網をタッカーで止めて、
モルタルで埋め戻します。
【散水確認】
雨漏り修理で大切なことの一つに施工後の散水確認があります。修理をした後にもう一度散水を行なうことで、本当に雨漏りが止まっているのかを確かめるのです。
多くの業者さんがここを疎かにして「暫く様子を見て下さい」と逃げてしまうので雨漏りが再発したということが起きてしまうのです。しっかり修理が出来ていれば散水をしても水が漏れることはありません。逃げ腰にならずに散水確認をして、修理が正しく完了出来たことを証明すれば良いのです。
私はこの度、モルタル埋め戻し後に散水確認を行ないました。仕上げも含めすべて工事が終ってからもしも漏水があった場合には仕上げ工事が無駄になってしまうからです。まぁ、そんなもしもは無いと思って散水するのですが……
ところが散水開始20分で漏れてしまいました。
ここから散水調査のやり直しです。各所にビニール養生を施し、原因箇所を絞り込みます。明らかになった原因箇所は戸袋の中でした。板金で塞がれていた戸袋の中には2次防水がありませんでした。戸袋の中に原因があれば強風を伴う雨の時に雨漏りが発生するという話とも一致します。戸袋内部の2次防水も直したのでこれでもう安心です。
再度、確認の散水を行ないます。もしもは2度起こってしまいました。やはり散水開始20分程で漏れてしまいました。絞り込みを行っていくと戸袋自体の皿板部分が原因と判明しました。
サッシ自体に問題がある場合、修理は難しくなります。サッシ自体を取り替えない限りはどうしてもシーリング材に頼った補修になってしまうからです。しかしこれからサッシ自体を交換する大掛かりな追加工事は施主様も考えられません。
【雨仕舞の工夫】
先ずは戸袋から下の2次防水を直すため工事を行ないます。手順は先に述べた通りです。
外壁を斫ってみますと水の通り道になっている箇所の木部はだいぶ傷んでおりました。
そして戸袋の下には今の施工ならば当然なされている先張り防水シート(捨て張り)がありません。これではサッシ自体から水が入ってしまえば内部に漏れてしまうのは当然です。
しかし今からサッシの下に防水紙を挿入することは容易ではありません。そこで板金を差し込み雨水が排出される仕組みを工夫して作りました。
後は木下地を補修して、2次防水を直し、ラス網、モルタル、と作業を進めて行きます。
モルタル埋め戻しまで終了したところで再度の散水確認です。3度目の正直でようやく雨漏りが止まったことを確認出来ました。
後は仕上げの塗装となります。仕上げ材は念のために防水性の高い材料を選定しました。
あれだけ壁を斫っても跡が分からない様に仕上げられるか、ここからは仕上げ業者としての腕の見せ所です。仕上げに関しての工夫も皆様にご紹介したい気持ちもございますが、この度のお話の中では割愛させていただきます。
お客様が「あれ!もしかして雨漏り⁉」と思ってから20年以上が経ち、これでようやく雨漏りが根本解決致しました。雨漏りを解決する方法は様々です。簡易補修でも十分だという場合いもございます。但し、大切なお住いにこれからも永く住み続けたいとお考えでしたら、どうかしっかりとした修理を選択して下さい。
雨漏りの修理はとてもデリケートで難しい工事です。本当に施工出来る業者はそう多くはないと思います。雨漏りでお困りの方が本当に雨漏りを解決出来る業者さんに出会えることを願います。
「あれっ!もしかして雨漏り⁉」と思ってからのお話・その1 ※2019年2月19日コラム「あれっ!もしかして雨漏り⁉」と思ってからのお話・その2 ※2019年4月2日コラム「あれっ!もしかして雨漏り⁉」と思ってからのお話・その3 ※本稿(2019年5月14日)
2019年5月14日
雨漏り110番小平店
米澤義則