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平成最強?の雨漏り【雨漏り110番練馬店】

2019.05.15 雨仕舞,神の目,ビックリ事例,建築構造・建築施工,雨漏り職人,複数浸入雨漏り,雨漏り事例,雨漏りに取り組む,コラム

本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番練馬店の藤田が担当します。

雨漏りの調査、特に最初の現地調査時に被疑箇所の推測をする時には尚更犯してはならないことが「思い込み」であろう。いわゆる「先入観」というやつである。人はどうしても過去の経験を基に物事を考えがちだが、こと雨漏りに関しては仇になることが多い。

先日も戸建ての木造建築に於いて、一階の和室の天井2箇所から雨漏りがするということでお問い合わせをいただいた。現地確認の上、早速雨漏り調査の見積書を提出。ほどなく調査の依頼があって数日後には調査を実施することとなった。
このときの被疑箇所は二階のサッシ廻りや雨戸戸袋付近、後付けのベランダの取付けアンカー付近など4箇所を想定していた。オーナー様によると、通常の雨では決して雨漏りはしないとのこと。風を伴い更に雨量も多い時に発生しているということであった。昨年の長雨の時にも発生したが、その後は乾季という事もあり雨漏りは発生していない様子。
しかし、今年の梅雨が始まる前にはさすがに何とかしておかないとという想いでお問合せをいただいたようである。

聞くと、昨年以前にも雨漏りがあり、その改善のため外壁の塗装を実施していた。その時の業者さんからは「塗装すれば治るはずです。」と説明されたのにも関わらず、その後も雨漏りは改善されなかったという事もあり、この雨漏りの解決にはことさら我々に寄せる期待は大きいようだった。
しかし、塗装したエリアをよく見るとクラックの処理もしていないお粗末な状況であった。当時の業者のいい加減さには多少の怒りを覚えたが、今は目の前の雨漏りの原因究明が最優先事項である。

被疑箇所を順番に散水し室内側では浸出の有無を確認する。いつもの光景だ。十数分後には和室の天井廻縁付近から調査水が染み出してきた。既存の雨染みの位置と合致しているしオーナー様にも確認してもらい確証を得た。
これで、原因の一つが特定出来た。これには、長年のストレスからやっと解放されるとオーナー様も大層喜んでくれた。まだ全部の原因が判明した訳ではないと興奮冷めやらぬオーナー様を落ち着かせつつ、続いて二つ目の被疑箇所、そして三つ目の被疑箇所と予定時間の散水を順次実施していく中で2箇所目の浸出も確認され雨漏りは全て再現された。はずだった。

確かに試験水の浸出は確認できるし雨漏りは再現されている。しかし、何かがおかしい。その違和感の原因は、一番大きな雨染みの中心部分が濡れないことであった。その雨染みの右側3分の1は既に試験水で濡れているのだが、そこから既存の雨染み跡にまで拡大するようには思えなかった。その確信にも似た予感はやはり間違いではなかった。しばらく散水を継続してみたが同じ雨染みには進展せず、新たな方向に試験水は拡大を始めてしまったのだ。オーナー様も少し違うようだと残念そうである。その表情は午前中のものとはまるで別人のように曇っていた。

小屋裏の雨の浸出口は2箇所以上ある・・・

少し動揺した。でも、調査途中でその事実に気付いた事は幸運であった。オーナー様に間違った報告をしなくて済んだからである。しかし、それからが大変だった。その後、散水した箇所数はその日を含め累計5日間で20箇所を超えた。中には、一度散水した場所にも散水時間や水圧を変えた状況での確認も実施してみた。強風の後に浸出しているようだという情報を基に1日で1~2箇所だけの散水調査も行ってみた。
その後、4日目までは特に大きな成果も得られず、オーナー様にも水道代の方が心配だとつぶやかせてしまう始末。迷宮入り一歩手前である。

雨漏りの完全解決までに足掛け3年という不名誉な記録を2件持っている私だが、それは鉄骨造や鉄筋コンクリート造での話であって、木造で5日目に突入するとはさすがに長い。「このままでは、初めての未解決案件になってしまうのか?!」と悪夢が脳裏を過る。と同時に「雨漏りには原因が必ず有る! それを探せばいいだけ!」と自分を鼓舞する天使も舞い降りて来た。そして5日目、ついに浸入口は特定されることとなる。

原因は二階の大屋根の端末付近、広小舞(ひろこまい)のジョイント部分であった。

広小舞ジョイント

大まかに言うと、その広小舞のジョイント部分から浸入した雨は鼻隠しの内側を流れ軒天内に移動、軒天内で拡散した雨水は壁面内に落下、2階のサッシ上部に着水した後サッシの両側から更に下方へ落下、その先には1階の天井があった。という経路である可能性が高い。浸入雨水の移動距離が長いため再現にはそれなりの時間を要した。広小舞は最長で4m程度の木材であるため、広小舞同士のジョイントは4mおきにしか存在しない。その位置が雨漏り浸出位置から横方向への距離が多少大きかったこともあり、そのピンポイントからの浸入であることが5日目にしてようやく判明したのであった。また、それ以外の被疑箇所となり得る場所が多かったことで目移りしてしまったことも今回の調査が長引いた要因かもしれない。

今回の雨漏り調査の反省点は以下の通りである。
①最初の現調時に2階の大屋根までを調査対象とはしていなかった。
②最初の現調時に天井の雨染みの状況から浸出は2箇所としていた。
という事であろう。

いずれも、致命的な「思い込み」と言わざるを得ない。とは言え、最初から浸出箇所が3箇所だと読み取っていたとしてもその後の推測や手順に大差はなかったと思う。
元々難解な雨漏りだったのだ。ただ、最初から難解だと気づいていれば予算をこんなにオーバーすることはなかったはずである。それでも、これでまた経験値が増えたことも救いであるし収穫も沢山あったのだ。

と思うことにしたい。

結果、累計5日間の雨漏り調査という内容であったが、期間としては数カ月に及んでいる。オーナー様ご在宅のご都合もあり、こちらの都合もあり長引いてしまったのである。
実は、平成30年から調査は開始され、平成31年に解決したという年またぎの案件でもあったのだが、もう少し長引けば平成から令和までの時代またぎという【平成最強雨漏り】の称号を与えられたかもしれない?

修理はこれからで、最終確認まで安心はできないが、今年の台風でも雨漏りしなかった時のオーナー様の笑顔のために力を尽くしたいと思う。

2019年5月15日
雨漏り110番練馬店
藤田裕二

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