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雨漏りにおける様々な雨水浸入位置【雨漏り110番大田店】
本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番大田店の倉方が担当します。
よろしくお願いたします。
本日のコラムでは、これまで私が経験した様々な『雨水浸入位置』のお話をさせていただきます。※雨水浸入位置とは=雨水が建物外部の仕上げ層より内部に浸入するところ。(NPO法人雨漏り診断士協会・雨漏り関連用語から引用)
板金屋根の雨水が集まる部分です。
立上りの波板まで水が溜まっているのがわかります。
この水の下は板金屋根となっており、その板金屋根の下には2次防水であるアスファルトルーフィングが施工されています。
アスファルトルーフィング自体は水を通しません。
しかしながらアスファルトルーフィングはタッカーなどで固定されているため、板金屋根の裏に浸入した雨水は、タッカーの穴などから建物内部に浸入して雨漏りしてしまうことは十分考えられます。
この写真は写真1の出口(外壁側)です。
壁際の樋の『枡』に水が滞留してしまっています。
『枡』の下には竪樋の『曲がり』があり、その曲がり部分がゴミで詰まってしまい、枡に水が溜まった状況です。
単純な話をすれば『樋にゴミが詰まって発生した雨漏り』と言えます。
『オーバーフロー系雨漏り』に分類することができます。
鉄筋コンクリート造(RC造)のベランダです。
スチール製の避難ハッチが錆びてしまっています。
この下の天井部分に雨漏りするようです。
雨水浸入位置はこの傷んでしまった避難ハッチなのですが、なぜここまで朽ちてしまったのか?と言えば、賃貸物件で貸し出しているため日頃のメンテナンスや確認ができなかったことが大きな要因です。
また、ベランダに賃借人の私物が溢れ、目視確認がままならなかったという状況も、ここまで被害を大きくしてしまった要因と言えます。
写真3の避難ハッチの蓋を開けたところです。
蓋だけでなく枠も朽ちてしまっているのがわかります。
もはやここまで来ると手の施しようがないといってもいいでしょう。
改修用のリペアハッチ(ステンレス製)に交換するしかありません。
木造住宅の屋根です。
在来工法2階建て、ロフト付きで、屋根の一部がルーフバルコニーになっています。
通常このようなルーフバルコニー絡みの雨漏りでは『出入り口ドア枠と壁』、あるいは『出入り口ドア枠と防水の取り合い』などが雨水浸入位置となる場合が多いのですが、今回は違いました。
これはドアから屋根の棟を見たところです。
ケラバ板金と棟板金の付近、なにか違和感をありませんか?
ブツブツとした白い部分が外壁(吹付けタイル+塗装仕上げ)、黒い部分(幅の広い部分)は棟板金です。
斜めに降りて棟板金にあたっている部分がケラバ板金です。
そのケラバ板金と外壁との間に白い板のようなものがありますが、これが屋根の下地、野地板となります。
雨が降るとケラバ板金に流れる雨水は棟板金に当たりますね。
それはあたり前のことなのですが、野地板の端部とケラバ板金の『かぶり』がほとんど無いことがこの写真でわかります。
この赤丸部分ですね。
ここに流てきた雨水は野地板端部とケラバ板金端部の隙間から外壁の内側に浸入し、室内に雨漏りとして現れます。
それを防ぐためにケラバ板金端部と野地板端部にシーリングを施した痕跡があります。
シーリングを施したあとがあるということは、言い方を変えればここが雨漏りのウィークポイントとなり得ることを施工者は知っていたということになりますよね。
この時、シーリングではなくケラバ板金を大きく(長く)するなどの施工をしていれば、そもそもこの雨漏りは発生しなかった可能性が高いと言えます。
こちらも木造住宅、在来工法の建物です。
坪庭のように一部凹んでいる外壁3階部分に掃出し窓があり、グレーチングで外に出入りできる作りとなっている建物です。
グレーチングを乗せている部分の下側です。
グレーチングを乗せているということは人の出入りやエアコン室外機が乗るということを想定していると想像できます。
それには一定の重さに耐える事が必要です。
この付け根は坪庭外側の出隅に近く、グレーチングを支えているこの部分は柱に縫っていると考えられます。
散水調査の結果、この金属カバー上部に散水すると雨漏り具象が再現されました。
では、どうやって雨水は壁の内部に浸入したのでしょうか?
金属カバーの下部分を内側に折っていますよね。
これは板金加工では当たり前のようにされていることです。
そして折った小口がそのまま壁内に入ってしまっています。
折った板金に雨水が貯まる→貯まった雨水が壁内に供給される→頻繁に繰り返すことにより2次防水であるアスファルトフェルトやラス網を固定しているタッカーなどが錆びる→タッカーの穴などが広がり雨水が2次防水内部に浸入→最終的に雨漏り具象となって現れた。という事例です。
写真9の解説でグレーチングの支えとなっているこの部分は柱に縫っているということをお話しました。
この雨漏りの事例では、その柱を雨水が侵食し傷んでしまったことで構造的に役目を果たさなくなっていました。
結果的に、通し柱であったこの柱を入れ替えるという想像以上に大きな工事となってしまった事例でした。
この建物も、新築時に折り返した小口に雨水が行かないようハサミを入れて『縁を切る』、または雨水が入ることを想定したうえで、きちんと排水する仕組みを作ることができていれば防ぐことができた雨漏りと言えます。
このように雨水浸入位置はいろいろなところに存在します。
単純に屋根からの雨漏りと言っても、写真1.2のような『詰まり』から発生するオーバーフロー系雨漏りや、写真5.6.7のように構造的に雨漏りのウィークポイントで雨漏りになるべくしてなった雨漏りなど原因は様々です。
一口に屋根からの雨漏りと言っても、トップライト絡みや方形屋根(ホウギョウヤネ)での隅棟からの雨漏り、経年劣化で軒先が傷んでしまったことによる雨漏り、下屋根と壁との取り合いからの雨漏りなど、そのカタチ、構造の違いなどで原因は様々です。
また、ベランダや屋上などの防水絡みの雨漏りも、単純に防水が切れただけの雨漏りもあれば、写真3.4の事例は極端だとしても避難ハッチの取り付け位置が悪くて雨漏りするケースや、サッシとのクリアランスが無いことが原因で雨漏りするケース、鋳物のドレンと雨水管である塩ビ管との取り合いから雨水浸入するケース、笠木から雨水浸入するケースなど、単に防水だけの問題ではない雨漏りも多々あります。
そしていろいろな部分が取り合いとなっている外壁からの雨水浸入があります。
私の個人的な感覚で言えば、木造戸建てでは外壁からの雨漏りが一番多いと感じています。
例えば外壁と異物の取り合いなどが多いです。
写真8.9.10であげた事例ではグレーチング支え部分が雨水浸入位置でした。
また、開口部であるサッシ取り合いからの雨水浸入のケースも非常に多いです。
特に狭小地に建っている建物は、軒の出が小さいうえに、窓上に庇が無い建物が多く、サッシに直接雨が当たってしまう事で、サッシ取り合いからの雨漏りが多くなっていると考えられます。
バルコニー笠木と外壁取り合いの部分からの雨水浸入も多いですね。
この部分は『3面交点』といって3次元的な形状の部分に2次元的止水材であるアスファルトフェルトや透湿防水シート、防水テープなどを使用して2次防水を施工しなければいけません。
そういった施工に手間や特別な部材が必要ということも雨漏りが多い要因となってしまっているのかもしれません。
後付けバルコニーの取り付けビスなども雨水浸入位置として多いですね。
このように雨水浸入位置といっても様々です。
ほんの少しだけですが事例を挙げさせていただきました。
雨漏りの原因があって雨漏りという症状がある。
原因がわからなければ修理もできません。
これは当たり前のことです。
自分の身体で例えると具合の悪いときにお医者さんに行きますよね。
しかし原因がわからないまま治療はしませんよね。
いろいろ検査をして、その結果に基づいて、プロであるお医者さんが治療します。
雨漏りも一緒です。
原因があって雨漏りする。
その原因がわからなくて雨漏りは止まりません。
このコラムが皆様の雨漏り解決の一つの指針となれば幸いです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2019年3月31日
雨漏り110番大田店
倉方康幸