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鉄筋コンクリート造の雨漏り事例・その3【雨漏り110番藤沢店】

2019.05.11 神の目,プロフェッショナルとして,建築構造・建築施工,雨漏り調査の方法,雨漏り事例,雨漏り診断・雨漏り調査,雨漏りに取り組む,雨漏り110番グループ,コラム

本日の雨漏り110番コラムは雨漏り110番藤沢店の原田が担当します。

本日のコラムでご紹介するのは鉄筋コンクリート造の雨漏り事例です。
本題に入る前に、まずコラムの本文中に出てくる雨漏り関連用語について解説します。
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【雨漏り関連用語】※NPO法人雨漏り診断士協会が定義し提唱している用語です。
「雨漏り」
施工の意図に反し、建物内部に雨水が浸入すること。
「雨漏り具象」
雨水浸入が推察され、建物内で雨水の経路、含水、浸出等が現認可能になる状態のこと。
「雨漏り解決」
意図的な施策により雨漏り具象が発生しなくなること。
「雨漏り診断」
多様な調査方法(散水調査・貯水調査等)を駆使して、雨漏りの原因を特定すること。
「雨水浸入位置」
雨水が建物外部の仕上げ層より内部に浸入するところ。
「雨水浸出位置」
浸入した雨水が建物内部の仕上げ層表面より浸出するところ。
「単一雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が1箇所であり、雨水浸出位置が1箇所の雨漏りのこと。
「複数浸入雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が複数箇所であり、雨水浸出位置が1箇所の雨漏りのこと。
「複数浸出雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が1箇所であり、雨水浸出位置が複数箇所の雨漏りのこと。
「創発雨漏り」
各要因の複雑な相互作用により、問題のある部位ごとの性質にとどまらない状態にある雨漏りのこと。
「浸水経路」
雨水の浸入から浸出までの経路のこと。
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それでは本題に入ります。
2019.2.16に掲載されました、鉄筋コンクリート造の雨漏り事例・その1
2019.3.30に掲載されました、鉄筋コンクリート造の雨漏り事例・その2の続きです。

前回の調査で暗闇に光が差し込むような明らかな手ごたえを感じた私は、場所の特定をすべく、4Fのサッシ付近を細かく分けて散水調査を行ってゆきます。

★9/10 13:05~15:05
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ下部の水切りからサッシレール付近のシーリング破断部より下で満水調査

雨漏り再現せず
満水の水位変化なし

★9/10 15:10~17:00
その状態のまま、シーリング破断部まで水をためて満水調査

雨漏り再現せず
満水の水位変化なし

★9/11 8:50~11:50
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ水切り先端部および下方タイル面にダブルで散水

雨漏り再現せず

★9/24 8:45~11:45
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ下部レール付近に散水

雨漏り再現せず

☆9/25 8:10~8:20
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側小口を上部から散水

雨漏り具象再現(10分)

雨漏り具象再現状況

ここで再現成功です。更に細かく調査を進めてゆきます。

★9/25 8:45~9:05
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側下部のシーリング破断部へ散水

雨漏り再現せず

★9/25 9:06~9:26
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側下部の組付け部分へ散水

雨漏り再現せず

★9/25 9:46~10:06
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側下寄りのビス付近へ散水

雨漏り再現せず

★9/25 10:12~10:32
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側中央付近へ散水

雨漏り再現せず

★9/25 10:36~10:56
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側上寄りビス付近へ散水

雨漏り再現せず

☆9/25 10:59~11:07
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側上部入隅へ散水

雨漏り再現(8分)

雨漏り具象再現状況です。

再び再現成功です。

☆9/25 11:31~11:35
同じ状態で、入隅以外を養生して散水

雨漏り再現(4分)

散水箇所をよく見てみると小さな穴があいていました。

北面4Fサッシ右側入隅部の欠損状況
赤丸で囲んだ箇所が欠損部分です。

つまようじの先が刺さる程度の本当に小さな穴です。
しかし、その下のタイルの小口を打音診断すると、わずかな空隙音を確認することができました。

★9/25 12:24~12:44
欠損部分をパテで埋め、同じ状態で散水

雨漏り再現せず

ここだ!ここだったんだ!
確信した瞬間です。
念のため、今回ポイントとなった散水方法で再度確認しました。

★9/25 13:00~16:00
4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、入水被疑箇所をパテで埋めた状態で7月7日と同じ条件で散水

雨漏り再現せず

この段階で方々に連絡をし、前回の元請け業者様、施工業者様お立会いの下、検証を行うことになりました。

◎10/2 9:11~9:17
雨漏り再現の検証
前回工事の元請け様、施工業者様お立会いの下、雨漏り再現の検証を行いました。

4階の窓を閉め切り換気扇を付けた状態で、北面4Fサッシ右側上部入隅へ散水

雨漏り再現(6分)

雨漏り具象再現状況

お立会いいただいた元請け業者様、施工業者様共に雨漏り具象の再現に『よく見つけましたね。』と驚いた様子でしたが、再現状況を目の当たりにし、『これは間違いなく確かに漏れていると思います。』とその状況を認めてくださいました。
そのうえで、今回の雨漏りがどのようなメカニズムで起こったのかということを、ご説明させていただきました。

今回の雨漏りの雨水浸入位置はRC造(鉄筋コンクリート造)6階建ての4階サッシの右上、タイル目地の小さな欠損部分です。

この広い壁面の中のつまようじの先が入る程度のほんの小さな穴です。

今回の雨漏りにはいくつかのポイントがありました。
ポイント①:3階居室の漏水は台風などの荒天時にしか起こらない。
ポイント②:今回の調査で同じセッティングで散水しても雨漏り具象が再現したりしなかったりした。

上記のポイントから以下のことが推測されました。
ポイント①について:荒天時には窓を閉め切っているであろう。
ポイント②について:ただ水が流れるだけでなく、何らかの力が働いているであろう。

上記を踏まえ、調査を重ねているうちに、以下のことが分かりました。
ポイント③:4階居室東寄りサッシ右側のタイル小口に空隙音がある。
ポイント④:4階居室の換気扇は24時間常に付けている。(ヒアリングにより判明)

以上のことから、4階居室の窓を閉め切り換気扇を回すことで室内が負圧(※1)となり、雨水浸入位置から雨水が引き込まれ、4階居室東寄りサッシ右側のタイル内の空隙を通り下へと流れ、4階居室の床へ到達し、床にたまった雨水が床のひび割れ等を通り、3階居室の天井に滞留し、雨漏り具象が発生したと推測しました。
(※1:この場合の負圧とは、室内を閉め切り換気扇を排気状態で回すことで、外気より室内の気圧が低くなることを指します。)
RC造(鉄筋コンクリート造)の場合は雨仕舞い(雨水を速やかに建物外部に排出する仕組み)の概念はなく、外部に施されたシーリング材や磁器タイル、そしてコンクリート自体の厚みで雨水を室内にまで到達させない構造になっています。
したがって、雨水浸入位置のみを塞いでも別の浸入位置が発生した場合には、再度雨漏り具象を起こす恐れがあります。
そのため、ご依頼をいただきましたオーナー様にはタイル目地の穴を塞ぐだけではなく、空隙音のするタイル(サッシ右側のタイル)を全て撤去し、空隙を埋め、タイルを貼り直すといったご提案をさせていただきました。
念のため、タイル目地の欠損部分をパテで埋め、4階居室の窓を閉め切り、換気扇を回した状態で全面の散水調査を実施し、雨漏りが再現されないことを確認したうえで、改善工事を行いました。

空隙音のするタイルを撤去すると、内側の状況があきらかになりました。

やはり隙間があいていることが分かります。
また、水が流れた跡も確認できました。

きちんと下地を作ってゆきます。

新規のタイルを貼り付け、目地を詰めています。

サッシ横のシーリングを打ち、工事完了です。

季節をまたいでの長い期間に渡る工事となりました。
6階建ての大きな建物を悩ました雨漏りは、タイル目地にあった本当に小さな穴から浸入した雨水によるものでした。
原因究明にはかなりの時間を要しましたが、あれから2年以上経ちますが、それ以降、雨漏りの報告は受けていません。
今回はいろいろな方のご協力を頂き、この雨漏りを解決することができました。雨漏り110番という組織で仲間の協力が得られたことは、大変ありがたかったです。

2019年5月11日
雨漏り110番藤沢店
原田京子

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