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鉄骨造の雨漏り事例(その2)【雨漏り110番藤沢店】
本日の雨漏り110番コラムは前回に引き続き雨漏り110番藤沢店の能登が担当します。
本日のコラムでご紹介するのは鉄骨造の雨漏り事例です。
本題に入る前に、まずコラムの本文中に出てくる雨漏り関連用語について解説します。
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【雨漏り関連用語】※NPO法人雨漏り診断士協会が定義し提唱している用語です。
「雨漏り」
施工の意図に反し、建物内部に雨水が浸入すること。
「雨漏り具象」
雨水浸入が推察され、建物内で雨水の経路、含水、浸出等が現認可能になる状態のこと。
「雨漏り解決」
意図的な施策により雨漏り具象が発生しなくなること。
「雨漏り診断」
多様な調査方法(散水調査・貯水調査等)を駆使して、雨漏りの原因を特定すること。
「雨水浸入位置」
雨水が建物外部の仕上げ層より内部に浸入するところ。
「雨水浸出位置」
浸入した雨水が建物内部の仕上げ層表面より浸出するところ。
「単一雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が1箇所であり、雨水浸出位置が1箇所の雨漏りのこと。
「複数浸入雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が複数箇所であり、雨水浸出位置が1箇所の雨漏りのこと。
「複数浸出雨漏り」
原因となる雨水浸入位置が1箇所であり、雨水浸出位置が複数箇所の雨漏りのこと。
「創発雨漏り」
各要因の複雑な相互作用により、問題のある部位ごとの性質にとどまらない状態にある雨漏りのこと。
「浸水経路」
雨水の浸入から浸出までの経路のこと。
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それでは本題に入ります。
前回の2階建て鉄骨造の雨漏り散水調査からの続きの投稿になります。
散水調査の結果より、西面及び北面の外壁サイディングの全面張り替えや、西面1階の出窓の上部に板金屋根の施工、屋上室外機置場床の防水工事などをご提案させていただきました。
西面1階の出窓については、トップライト出窓で天井部分が嵌め殺しガラスとなっているのですが、アルミ枠などのシーリングなどを打ち変えても、シーリングが劣化すると、また、雨漏りが発生してしまうとのことだったので、お客様とお打ち合わせの上、板金屋根を被せて、出窓の天井部分の嵌め殺しのガラスを覆い隠すことになりました。
まずは、仮設足場の設置を行います。
散水調査時に組んだ足場は、そのまま利用させていただき、足りない部分に足場を掛けます。
まず、西面1階のトップライト出窓の天井部分のなどのサッシ枠及びガラス廻り等、既存シーリングを撤去し、新規にシーリングを打ち均します。
西面1階のトップライト出窓の天井部分などに木下地を組みます。
トップライト出窓の天井部分がガラスのため、撤去したものの落下などにより、ガラスの破損を防ぐ為に先行して行いました。
西面及び北面の既存外壁サイディングの撤去を行います。
既存外壁サイディングの撤去後に、各箇所の納まりの確認を行いました。
写真は、アルミ製の水切りの既存納まりですが、本来、水の浸入を防ぐ為のルーフィンング(黒い紙)は、水切りの上に覆い被せなければなりませんが、既存納まりはルーフィング(黒い紙)の上に水切りが取り付けられており、水が浸入した際に内側に水を呼び込んでしまうため、雨漏りをしやすい状態となっています。
この納まりは、この部位だけではなく、サッシ窓廻りなどの各箇所の多くにおいて同じ状態であり、これが雨漏りの原因の一つとして、確認することができました。
また、雨漏りをしている箇所を確認したところ、躯体の鉄骨に錆が発生しており、雨染みなども見受けられました。
また、通常、サッシ窓廻り等には防水テープなどを張りますが、この処置は行われておりませんでした。
既存外壁サイディングの撤去が完了したところで、お客様に状態を見ていただきながら、雨漏りの原因などについてご説明をさせていただきました。
この時、外壁内部の断熱材が入っていない部分も多くあり、お客様もその状況を確認したところ、断熱材を入れてほしいとのご依頼があり、断熱材を新規で入れることになりました。
新規に断熱材を入れ込みました。
新規に断熱材を入れ込んでいるときに、各箇所の納まりの打ち合わせをしていると、西面2階出窓の屋根部分が破損していることが判明し、お客様とお打ち合わせの上、この出窓の屋根部分も屋根板金を覆い被せることになりました。
両面の防水テープを既存屋根に貼り、改質アスファルトルーフィングを張りました。(※写真は在りませんが、この後、板金の施工を行っています。)
また、屋根部分に木下地を組んだ西面1階の出窓にも、同じく改質アスファルトルーフィングを張りました。
駐輪場の既存軒天の撤去を行います。過去、何度かの雨漏りによって軒天が脆くなっていたため、張り替えを行います。
駐輪場の軒天に、新規ケイカル板を張っているところです。
サッシ窓廻り等、必要な部分に両面の防水テープを貼ります。
外壁に透湿防水シートを張ります。この時、サッシ窓廻り等に貼った両面の防水テープにしっかりと接着します。
駐輪場の軒天と外壁の取り合い部にオーバーハング水切り板金を取り付けます。
駐輪場の軒天と外壁の取り合い部に取り付けたオーバーハング水切りに両面の防水テープを貼り、透湿防水シートをしっかりと接着します。
バルコニーのアルミ笠木の直下に水切り板金を差し込んで取り付けます。
(※バルコニーは前回の工事、防水処理済みでアルミ笠木内部も防水処理済み。)
外壁の透湿防水シートの上に、胴縁を打ち、サイディング内部の空気層を確保します。
ここまでが、新規サイディングを張る前の下地処理ということになりますが、この段階で、雨が漏らないようにすることがとても重要なことで、ここで間違った納まりや施工をしてしまうと雨漏りの原因になることもあるので、十分な注意と確かな施工が必要です。
サイディングの目地にはハットジョイナーと呼ばれる水漏れ防止材を取り付けながら、新規サイディングを張り付けます。
新規サイディングの張り付けが完了後、目地や窓廻りなどに新規シーリングを打ち均します。
西面1階出窓の屋根部分に板金の施工を行った後です。
屋上室外機置場床の防水施工を行います。まずは、アルミ笠木を一時撤去し、アルミ笠木内部も防水が行えるようにします。
この部分は、アルミ笠木が覆い被さっているので、雨は入らないと思いがちですが、ここの防水処置がしっかりと行われていないと水が浸入したときに、雨漏りの原因となるので、しっかりと処置を行う必要があります。
屋上室外機置場床に防水用カチオン系セメントを塗布し、表面を平滑にします。
屋上室外機置場床に防水用プライマー(下塗り材)を塗布します。
屋上室外機置場床で雨漏りの原因の一つである、排水口部分に防水用改修ドレンを取り付け、排水口を新規防水塗膜と一体化させることで、隙間を無くし、雨漏りを防ぎます。
屋上室外機置場床の立ち上がり部分も含め、防水材を塗布します。
(※防水材の塗布は2回行いました。)
この後、トップコートの塗布を行い、一時撤去していたアルミ笠木を戻して、防水の施工は完了です。
最後に新規雨樋を取り付けて、外壁の新規サイディング張り付け作業は完了です。
この後、最終確認として、施工後の散水検査を行い、雨漏りが止まっているか否かを確認するのですが、その前に何か不備がないかチェックを行います。
西面外壁の施工後の散水検査です。
この瞬間は、何度も迎えても緊張します。もちろん、これまでの施工の経過や内容からは、施工後に雨漏りがする可能性は少ないのですが、それでも、やはり不安というものはあるものです。
ですが、そんな不安はよそに、雨漏りは発生することはなく、無事に雨漏りを止めることができました。
今回の雨漏りは、あらゆる箇所からの浸入・浸出の雨漏り、すなわち「創発雨漏り」でした。外壁内部の透湿防水シートなどの2次防水納まりの不備が大きな要因であり、いかにこの2次防水の納まりや施工の重要性かが明確に表れてしまった事案でありました。
2019年8月6日
雨漏り110番藤沢店
能登広